三沢は死なない
茫然自失だ。
僕は20年近い三沢ファンである。ちょっと前までPCのモニターは三沢がエルボーかましている写真を使っていた。
彼が二代目タイガーマスクとして全日本プロレスのリングに立った時から、初代とは違う、マスクの裏に隠されたプロレスラー三沢の個性が出ていて、それが最初はガッカリもしたし興味も覚えた。
マスクマン、特にタイガーマスクとしてのキャリアを積むのには限界があると感じた彼は、試合中に突然マスクを脱いだ。それは衝撃的な出来事だった。ちなみにマスクを脱がせるの手伝ったのは川田だ。
三沢はプロレスラーとしては決して恵まれた体格ではなかった。今でこそ180㎝前後の選手でも十分に活躍できる、できるだけのレベルが上がったのだが、馬場やジャンボ鶴田、天龍など、軒並み身長190㎝前後の選手がメイン選手だった当時、三沢はどちらかというと小ぶりな選手だった。試合っぷりも頼りなく思えた。
彼が頭角を現し始めたのは、30歳を過ぎてから。特に30代半ばあたりの三沢は凄まじかった。川田との死闘は今でも目に焼きついている。ビデオに録って何度も観た。
プロレスはショーだとか、最初から勝ち負けが決まっているとか、八百長だとか、よく言われる。僕はコアなファンではないので、本当のところはわからない。わからないが、僕の目から見ても明らかに筋書きがあるような試合は確かに見受けられる。
プロレスは相手の技は基本的に受けるのが原則らしい。これは天龍が言っていたのかな?だって、相手をロープに投げて反動で返ってきた選手に攻撃するって、これ、決まりごとがなければ成立しないもん。
三沢が画期的だったのは、八百長かどうかとか、勘ぐるのがアホらしくなる位のガチンコバトルをするところだった。明らかに約束事の範疇を越えているような攻撃をする。もちろん、過去にもそういう選手はいた。アントニオ猪木とかやはり今は亡き橋本や、その他の選手だって、毎回ではないけど、あきらかに大人のマジタイマンだな、と感じるような試合は幾つもあった。
彼の代名詞である「エルボー」で一体何人の選手が気絶したか。何人の選手が病院送りになったことか。そして、そのエルボーは今や団体を超えてどこの選手も使っている。ただ、誰も三沢のようなダメージを与えることはできない。あれは三沢の専売特許だ。
今じゃ当たり前になっているえぐい角度で脳天をリングに突き刺すような技だって、三沢辺りから始まった。
ただ、そのような身を削るような試合をしているから、僕がファンになった当時から彼の身体はぼろぼろだった。膝、肘、肋骨、首。特に首はやばかったと思う。亡くなった原因も、きっとこの首の怪我だったみたいだし。
それと三沢がカッコイイのは、試合中激しい試合を繰り広げるのに、試合後のコメントは「です・ます」調で、しかもごく普通のテンションで話すことだった。
通常、プロレスラーの試合後のコメントは「この野郎バカ野郎ぶっ殺すぞ」的なもので、これはアメリカのプロレスのコピー。やたら芝居がかっていて、それはそれでおもしろいけど、こういうのって余計ショーに見えちゃうのね?
ちなみに僕はプロレスが「ショー」だって構わないと思っているのだけど、ただ、どっちが観ていて興奮するかって言ったらねぇ‥。
三沢はジャイアント馬場が亡くなった後、全日本プロレスの社長に就任したが、その後大部分の全日本の選手を従えて新しい団体「NOAH」を設立した。パッと見は背任行為のように思えなくもないが、いろいろは事情があっただろうし、何よりもあの三沢が新しい団体をつくるってことにワクワクした。
三沢のカリスマ性や女性ファンを増やすためのイベントも行い、恐らくプロレス団体の中では最も収益は多かったと思う。選手達の必殺技名をファン応募によって決めたりもしていた。地味なサービスだが、こういうのをコツコツと実行できるのは、会社の風通しが良いからだと思う。
NOAHはヨーロッパ遠征もしていたがヨーロッパへの三沢ファンは多いのだ。三沢がリングに上がったときの観衆の熱狂振りは他の選手と比べ物にならない。すごいぞ三沢。
NOAHの試合は「三沢イズム」バリバリで、とにかくガチンコな試合が多いのも多くのファンを獲得した理由だろう。あれ観ちゃうと新日本の試合、チンタラやっているように見えちゃうものだった。
三沢のプレイスタイルは、最近になっても、さすがにスピードは落ちていたけど、健在だった。数年前にNOAHの至宝であるGHCチャンピオンにも返り咲いていた。
チャンピオン返り咲き直後のインタビューで「最近、お腹が出てきたとかよく言われるんですけど、おじさんもまだまだやれるということを見せれてよかったです」と、ズッコケなコメントをしていた。さすがだ三沢。
頭が混乱していて、努めて冷静に書いていたら、何を言いたかったのだかわからなくなってきた。
僕は全日本プロレスが放映されていた当時から日曜日の深夜を楽しみにしていた。
先月だっけ?もっと前だっけ?日本テレビが放映を打ち切りにしやがった時はひとり、ひっそりとガッカリしたものだった。社長としての三沢はかなり苦しかったのではないだろうか。
特にK-1や総合格闘技の人気に火がついてからは、プロレスは何となくイケテないものになってしまった気がする。まるでロックのようだ。総合格闘技の選手の方が強くてカッコイイみたいなイメージが、皆さんにもありませんか??ジャズやエレクトロニカを聴いている自分はイケてるとか思っていませんか?あなたがイケてるんじゃなくて音楽がイケてることをお忘れなく。
でも、これも三沢が言っていたことだが、プロレスラーを総合格闘技に出したら負けない。フリーの選手や小さい団体の選手ばかりがこういった総合格闘技に参戦しているから、芳しい結果を残せていないかもしれないが、いい選手を選抜させて、ちゃんと総合格闘技のルールを覚えて試合に挑めば、絶対に結果を残す。
新日本プロレスの永田が、大分前にヒョードルと戦って開始数分で負けてしまったが、あれは、元々の対戦相手が急遽出れなくなって、何の準備もできないままリングにあがったからだ。ああいうのを観ると、やっぱりプロレスは八百長だよ、とか言われちゃう。全ては黒・谷川の差し金だ。あいつは本当に黒い。腹黒キューピーだ。
三沢は、猪木や馬場に並ぶプロレス界の至宝で、個人的にはこの二人よりも上をいっていると思っている。彼に影響を受けた選手は山のようにいる。試合スタイルを見ればわかる。
本当に悲しい、突然の死だった。昨晩は、見てもいないのに、最後に三沢がバックドロップを喰らって意識不明になるシーンが何度も頭の中で映像としてグルグルまわって眠れなかった。
とてもじゃないが、まだ、「三沢今までありがとう、安らかに眠って下さい」とか言える気になれない。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)


最近のコメント